壁、小屋裏、床下の内部空間を連続させた「エアサイクル層」を作り、冬は暖気、夏は涼気を通わせることで住まいを快適に保つ「エアサイクルシステム」。 寒さや暑さを和らげるのはもちろん、湿気を拡散させ温度差を少なくすることで、躯体内の結露の発生を抑え、住む人と建物にやさしい空間をご提案しています。
放射(輻射)熱は私たちが暖かさ、涼しさを感じる上で大きな要素を占めています。 例えば室内空気が18℃と低くても、床や壁が24℃に暖められていれば、床や壁から熱が放射され快適な温度を感じます。 逆に室内気温が24℃と高くても、床や壁が14℃と低ければ人の体温が床や壁に発散し寒く感じます。 室内気温が低くても床暖房が快適なのは、主に放射(輻射)熱による暖房だからです。 人はこのように実際の温度より体感温度で暑さ、寒さと感じます。 「エアサイクルの家」は対流熱・伝導熱によって床・壁・天井などを暖め、または冷やします。 床・壁・天井からは主に放射(輻射)熱によって快適温度を得ることができます。
熱(冷)は物質に蓄えることができます。 夜になっても石や砂浜の暖かさにびっくりした経験を私たちはもっています。 蓄える物質の事を蓄熱体を呼びます。これは熱伝導率の低い物質が適しています。 「エアサイクルの家」の場合、内壁・天井の石こうボードや床下のコンクリートが蓄熱体です。床下にロックベッドを施工すると、特に効果を高められます。 熱は高い方から低い方へ流れますから、蓄熱は周りの温度が下がると放出されます。逆に蓄冷は周りの温度が上がると熱を吸収します。 「エアサイクルの家」で冬期の昼間の暖かさを夜に活かし、夏期の夜間の涼しさを昼に活かしている事も、蓄熱体により、この熱の原理を積極的に利用したものです。
北側の押入や、壁の中、土台部分はいつもジメジメしカビが発生したりします。 これは気づかないうちに結露が生じているからです。 このような場所はいつも気温が低く(飽和水蒸気量が小さい)、空気中の水蒸気量が他所と同じでも結露しやすくなります。 「エアサイクルの家」では、南側で暖まった空気を北側を含めた家全体に動かすことで、内壁・土台に結露しにくくなっているのです。
木材の含水率が15%位になると20%と比較して強度が1.5倍に増します。動く空気に触れていると腐巧菌に侵されにくくなります。
風は夏の対策として重要です。 太陽熱が冬の主役(パッシブヒーティング)とすれば、風は夏の主役(パッシブクーリング)です。 風があれば湿気をおさえる事もできますし、涼しさを感じることもできます。 扇風機や団扇はこのわかり易い例です。 風が吹くと風上側には正圧が、風下側には負圧が起こります。 正圧は押す力であり、負圧は引き込む力です。 夏期、涼しい風を正圧として採り入れ、負圧を利用して建物内の熱気を引き抜きます。通気層内に上昇気流が起こると負圧が生じます。 「エアサイクルの家」は独自に開発した開閉式の換気口(エアオープナー)をもっています。夏季はこれを開いて積極的に風を採り入れ、冬期は閉じて暖かさを保ちます。
1984年(昭和59年)4月、エアサイクルは誕生した。 「外断熱の分野においては、 私達は先駆者であったと思います。 オイルショック後の1979年(昭和54年)に省エネ法ができて、住宅の生活エネルギーを抑える、ということが推進されるようになりました。 ところがその結果、断熱効率を良くするために、壁の中に配慮のない、ただ断熱材をつめこんだだけという家が沢山出てくるようにもなってしまったのです。 それが結露やそれを原因とするハウスシックなどの問題と繋がっていきます。 その、壁の中の環境に配慮した断熱システムを作ろう、というところがエアサイクルのアイデアの始まりでした。」 とこう語るのは、1987年(昭和62年)入社の技術部課長、辻 修氏である。 この数十年、住宅に関するニーズは様々に変化してきており、それに伴ってフランチャイズに参加しておられる工務店様から、断熱システムであるエアサイクルシステムに対して求められる要望もどんどん変化してきています。 例えば、最近は断熱性能や気密性の向上が求められるようになってきている、というように。 住宅用建材を販売しているフランチャイズにも色々とあって、家を1件建てるための色々な素材を売るフランチャイズもあれば、常に同じものを提供してくるというフランチャイズもあります。 しかし、私達は、フクビ化学+伊藤忠建材というバックボーンのもと、長年の開発におけるアイデアとノウハウの蓄積と、エアサイクルというフランチャイズに参加していただいている工務店様の要望を繋ぐことによって、新しい商品を提供させていただいてきました。 つまり、『モノづくりフランチャイズ』であることに徹してきたことが、長年フランチャイズを継続できた生命線であったのだと思っています。」
エアサイクルにはもうひとつ、他のフランチャイズにはない特徴があります。 それは、フランチャイズの工務店様にシステムの使用を強制しない、ということ。 「基本的に、システムを使用していただく上で、設計の制約をすることはありません。 当然、システムを機能させるうえで、こういった設計・間取りでなければならないというものはありますから、曲げられないものは曲げてはいけません。 ただ、逆に言えば、その守らなければならない一線を守れば、それでいい。 その考えの根底には、様々な地域の工務店様との打ち合わせの中から、今のシステムの仕様を決めてきたということがあるからかもしれません。 エアサイクルにご参加いただいている工務店様は全国で約500社(2006年現在)。 私達のシステムは、あくまで工務店様のひとつの断熱アイテムとして推奨して頂き、お客様がより長く、 より気持ちよく、お住まいいただく上での縁の下の力持ちとしての役割をしている訳で、家づくりのうえでの主役はあくまで工務店様とお客様です。 屋根裏の換気口を設置するには腰屋根というスタイルが適しているのですが、お客様がデザイン的にどうしてもいやだ、ということはおありになるでしょうし、また列島南北では極端に気候が違いますから、家のスタイルも違ってくるのが当たり前のことです。 工務店様のオリジナル設計の中でうまく当社のシステムを取り入れていただこう、と考えながら、お打ち合わせの中でのご相談に応じさせていただいています。」 工務店様にシステムをいかにご理解いただいて、お客様のご要望される設計の中でそれをどう取り込んで効果を発揮させていただくか。また、どうしたら、システムをいかに取り込みやすく、使いやすくできるか。そういったことを常にエアサイクルは考えてきました。
エアサイクルホームシステム株式会社技術部 商品開発課 課長一級建築士辻 修
取材・撮影は東京事務所(フクビビル)にて行いました。
辻氏は今のエアサイクルに関してこう考えている。 「今のシステムは時代の変化に対応してきた積み重ねの結果です。以前のシステムより進化してきています。 ひとつに、非常に気密性が高くなってきた。 そして、もうひとつに施工性が良くなってきた。 施工性がいいということは、現場での使い勝手がいいということです。 では現場での使い勝手がいいということはどういうことかと言えば、材料に無駄が出ない、作業効率が良い、ということに結びつきます。 それは結果的にコスト削減や、廃材が少なく環境にも良いということにつながってゆくことになるわけです。 例をとれば、壁の断熱材の溝の切り方は、昔のものは現行のものと溝の切り方が違っていました。 現行の正方形のダイヤ型の溝には、部材において上下左右の区別がありません。また、基礎の断熱材は長さをカットして、割り付けています。 こうすると断熱材を使う場所に制限がなくなるし、基礎部分に照らし合わせてみて必要がない部分をカットして、材料を棄ててしまわなければならないこともない。 すなわち、余分な廃材が生まれないということなのです。」 エアサイクルシステムを支える部材は、大枠で6〜7点。 化学加工品でありある意味シンプルな構造であるこれらの部材を、更に新しいものへ発展させていくことは、至難の業であるようにも感じられる。 しかし、辻氏はこれで良し、とはしない。 「確かに化学製品単品としてみるならば、限界はあると思います。 しかし、長く同じものだけ見つめ続けていると、頭が固くなってしまって、発想が固定されてしまうことがあるので気をつけなければいけません。 果たして断熱材は現行の仕様で良いのか、という今現在のシステムを根本から見直すような類の疑問は常に持ち続けることが必要です。 何故なら、創業よりこれだけ変化してきたのです。 これからも変化してゆかないという保証はありません。 もっと新しい外断熱システムが要求されてくるかもしれないし、そのシステムにあった納まりの部材が追求されてゆくことになってくることでしょう。 その変化に柔軟に対応してゆくためには、日々の研究と細やかなコミュニケーションの積み重ねが、重要な礎となると考えています。」 辻氏は住宅建材に限らず、様々な異業種メーカーの展示会にも足を運ぶ、という。 そこには新しい発見がねむっている可能性があるからだ。視点を変えて素材を見つめていると、意外な方向性でエアサイクルに結びついてくることがあるのだそうだ。 実際の商品化まで結びつくことはなかなか少ないが、出会うことがなければ新しい発想もまた生まれてこない。 モノと人との出会いの間を行き来して、新しい住まいの支え方を探し続けてきた企業。それがエアサイクルである。 text / Shibata Hiromiphoto / Nakashima Satomi
工務店様とお客様の新しいニーズにこたえるべく、日々試行錯誤を繰り返す。
製品の事となると我が子の事のように熱く語りだす辻氏。